ITシステム会社の仕事がなくなる一つの例

建築会社を一人で経営する方が、Claude Cowork を使って事務作業をほぼ全て自動化している動画を見た。

https://youtu.be/9Y-DXXee8Ic?si=5PuC2GjeY84l2i33

動画の内容

この方は塗装工事の会社を経営しており、常時20〜30の現場を管理しながら、見積書・報告書・請求書などの事務作業に追われていたという。それを Claude の Cowork 機能(AI が自律的にタスクを実行する機能)に任せることで、大幅に時間を削減している。

具体的には、1つの現場が始まってから終わるまでの事務作業を9つのステップに分けて Claude に任せている:

  1. 案件登録 - Notion にデータベース、Google Drive にフォルダを自動作成(従来20分 → 3〜5分)
  2. 見積書作成 - 数量を入力フォームに打ち込むと Excel の見積書を自動生成
  3. 工事仕様書作成 - 見積データを元に職人向けの仕様書を作成
  4. 工程表・近隣挨拶文の作成 - 着工日・完工日を指定すると工程表と挨拶文を同時に生成
  5. 工事の実施 - ここは人間の仕事。施工写真を Google Drive に保存
  6. 施工報告書作成 - Drive の写真を取り込み、Excel の報告書を自動生成
  7. 請求書作成 - Notion の案件データから月ごとの請求書を自動作成
  8. メール作成 - 請求書を添付したメールの下書きを Gmail に作成(送信は人間が行う)
  9. 売上管理 - 月次の売上・利益率をまとめた Excel を自動生成

注目すべきは、この方は IT の専門家ではないということ。「こういうことがしたい」と伝えただけで、Claude が意図を汲み取って入力フォームを作ってくれたと語っている。

ITシステム会社の仕事がなくなる

この動画を見て思ったのは、従来であればこの種の業務を効率化するには「ITシステム」が必要だったということだ。

  • 見積書作成 → 見積管理システム
  • 工程表管理 → プロジェクト管理システム
  • 請求書発行 → 請求管理システム
  • 売上管理 → 会計・管理会計システム
  • 報告書作成 → ドキュメント管理システム

これらは個別のパッケージソフトや SaaS として存在し、あるいは業種特化のシステムとして受託開発されてきた。建設業向けの業務管理システムだけでも、数多くのベンダーが存在する。

しかし、この動画の方がやっていることは、それら全てを Claude という汎用 AI に「スキル」として教え込み、一つの対話インターフェースで完結させている。しかも、専用システムを導入するより遥かに低コスト(Claude の月額サブスクリプションのみ)で、自分の業務フローに完全にフィットした形で。

つまり、「見積書を作るシステムを開発してください」という発注自体が発生しなくなる。ユーザーが AI に直接「見積書を作って」と言えば済むからだ。

誰でも「コレ」ができるのか?

この方は IT の専門家ではないとは言ったが、以下の点でとても能力の高い人だと推測する。

  1. 業務を分析・設計できる
  2. 分析した業務を説明(言語化)できる
  3. IT ツールを使いこなしている

1. 業務を分析・設計できる — この方は、現場の事務作業を分解し、それぞれの入力と出力を明確にしている。これは「業務分析」「要件定義」と呼ばれるスキルそのものだ。

2. 分析した業務を説明(言語化)できる — AI に仕事を任せるには、自分の業務を言葉で説明できなければならない。「いつもやっている作業」を暗黙知のまま抱えている人は多いが、この方はそれを Claude に伝えられる程度に言語化できている。

3. IT ツールを使いこなしている — Notion、Google Drive、Gmail を連携させ、Claude の Cowork 機能やスキル設定を活用している。プログラミングはしていないが、複数の SaaS を組み合わせて業務基盤を構築するリテラシーは十分に高い。

この方のように業務設計を自力でできるならば、同じことができる。 しかし、そのような能力を持ち合わせている人は、全てのビジネスパーソンを見渡してみても稀かなとは思う。

結局、ITシステム開発会社はなくなるのか?

0 or 1 の議論なら「なくならない」だろう。

けど今、IT エンジニアの人達のこれに関する議論は 開発するソフトウェアが在る という前提で

  • いずれ全ての工程が AI に置き換えられるのだ
  • いや、コードを書く以外の工程は人間に依存する要素が多いからなくならない

などで、極めて近視眼的かなと思う。

この動画の例のように、今まではソフトウェアやプログラムが必要だったシーンが、これからは AI を雇い、「AI への指示」で代替できる。 それにより従来までは存在していたはずの 開発するソフトウェアが無くなる ということ。

基幹システムのような大黒柱の IT システムの新規開発が AI に代替されるとは、(現在は)想像できないが、木で言うところの枝葉の部分のサブシステム(目的特化の小〜中規模システム)は、次第にこうなるのではないか。 つまり、システム開発全体のパイは小さくなっていくのではないか、という主張だ。

前述の近視眼的な人達は、「プログラミングは AI に任せているけど、日々や月次の報告書は自分で作っている」なんてことをしていそうだ。

ITエンジニア全員、「ガチで危機感持った方がいい」w