Android Architecture Components(以下 AAC) に含まれる 「LiveData」 のサンプルを Kotlin で書いてみました。
LiveData とは、「ライフサイクルに応じて自動的に購読解除してくれる通知プロパティ」です。
モダン(と呼ぶにはもはや古い?)なUIパターンでは、UI側はデータの変更を検知して自身を書き換えます。 すなわちUI側では、「データを購読する」というコードを書くわけですが、「購読をやめる」というコードも合わせて考えなければなりません。しかし Android の Activity や Fragment はライフサイクルが複雑で、購読を管理するのも一苦労であり、不具合の温床になりがちです。
LiveData は AAC に含まれる Lifecycle と深く結びつき、この「購読解除」をほとんど自動的に行なってくれます。
いったい何人が、何回つくったのだろうと思われる GitHub のレポジトリ一覧を表示するやつです。
主な要素は次の通りです。
callbackExecutor
を設定してます。LiveData はライフサイクルと結びついて購読管理をしてくれるモノ、ということは ViewModel で使うのが自然かなと。Google のサンプルもそうなってたし。
さて、 LiveData を実際に使ってみたところ「マジか・・・」と思った点がいくつかあったので挙げてみます。
私が期待していたのは「DataBinding の ObservableFieldのように使える、且つ、購読管理が楽」というモノだったんですけど、ObservableField と決定的に違うのがここでした。
ObservableField は、値が 変更された時 に通知を行います。 LiveData は、値が 変更されていなくても設定されれば 通知を行います。
val observableFld = ObservableField<Int>()
observableFld.set(5)
observableFld.set(5)
observableFld.set(5) // 最初の1回しか通知されない(=onChangedは呼ばれない)
val liveData = MutableLiveData<Int>()
liveData.postValue(5)
liveData.postValue(5)
liveData.postValue(5)// 3回とも通知される(=onChangedが呼ばれる)
ViewModel が持つプロパティは、値が変わった時に通知し、View側はそれを検知して更新する。
が常識なので、LiveData もてっきりそうなってるのかと思ってましたが、違いました(だって on Changed
だったし…)。
この事を知っておかないと、以下のようなリスクがあります。
後者は、このサンプル作成で体験しました。
画面の EditText と ViewModel の LiveData<String>
の TwoWay バインディングを次のように「何も考えず」実装しました。
// viewModel.user の TwoWay バインド
// EditText -> LiveData
editUserName.addTextChangedListener(object : TextWatcher {
override fun onTextChanged(p0: CharSequence?, p1: Int, p2: Int, p3: Int) {
val userName = editUserName.text;
viewModel.user.postValue(userName.toString())
}
override fun beforeTextChanged(p0: CharSequence?, p1: Int, p2: Int, p3: Int) { }
override fun afterTextChanged(p0: Editable?) { }
})
// LiveData -> EditText
viewModel.user.observe(this, Observer { userName ->
editUserName.setTextKeepState(userName ?: "")
})
editUserName.setTextKeepState(viewModel.user?.value ?: "")
このコードは、初回の editUserName.setTextKeepState
をトリガーに、TextWatcher.onTextChanged と LiveData.observe が無限に繰り返されます。
今回は、TextWatcher.onTextChanged で同値チェックを行って回避しましたが、予期せぬトラブルの元になりそうです。
LiveData<T>
の実際に値を設定できるクラスである MutableLiveData<T>
には、 setValue()
と postValue()
の2つの値更新メソッドがあります。
はじめは setValue()
しか知らなくてそれを使っていたのですが、非UIスレッドで(Retrofitのコールバックスレッドで) setValue()
を使用したら IllegalなんとかException が出ました。
LiveData のコードを追ってみると、次図のようにUIスレッドかどうかをチェックして例外を出していました。
えー、 LiveData の setValue、 メインスレッドから呼ばないとエラーなのかー。それは observe 側(つまりView−Binding側)でマネージするもんじゃ・・・。 ReactiveProperty みてくれー。 pic.twitter.com/jSkXT4LK8w
— あめい@ハイドラ待ち (@amay077) 2017年11月2日
しかしその後、 @kkagurazaka さんに postValue()
もあるよ! と教えてもらいました。
MutableLiveData#postValueじゃだめですかね?
— Keita Kagurazaka (@kkagurazaka) 2017年11月3日
postVata
は、値の更新と通知をUIスレッド上で行ってくれるメソッドです。
モデル側の処理は大抵は非同期すなわち非UIスレッドで行われることを前提にすると思うので、setValue
は事実上使えないでしょう。
そして、LiveData は UIスレッドに強く依存しているので、ViewModel から「向こう側」では使うべきではないでしょう。
逆に LiveData
の observe
は、UIスレッドで行われることが保証されているので、わざわざ runOnUiThread
などをする必要はなさそうです。
さて DataBinding には BaseObservale
の基底クラスまたは ObservavleField
が必要です。 AAC を使う= ViewModel
を基底クラスにすることが多いと想定されるので前者は実質死亡。となれば DataBinding したければ ObservableField を使うしかありません。しかし ObservableField と LiveData は現在はなんの関係もないクラスなので、
という使い分けをしなければなりません。目的が違うとは言え、なんだか微妙です。
なんと LiveData が DataBinding に対応するようです。つまり ObservableField<T>
は要らない子になる可能性?
You can now use a LiveData object as an observable field in data binding expressions.(続く)
変更通知でなく「値を垂れ流すだけ」である LiveData をデータバインディングできるって、どうなっちゃうのか、すごく興味ありますね。続報を追っかけましょう。
文句言ってるだけでは何の解決にもならないので、現状打てる手を模索してみます。 Kotlin ならば拡張メソッドが使えるので、便利な拡張メソッドを作って使えばいいんじゃないかと。
まず、「LiveData は値の変更に関係なく通知されてしまう」については、値が変わったかをチェックして、変わっていた時だけ通知を行うような拡張メソッドを作ってみました。
fun <T> LiveData<T>.observeOnChanged(owner: LifecycleOwner, observer: Observer<T>) : Unit {
var prev : T? = null
this.observe(owner, Observer<T> {
if (!(prev?.equals(it) ?: false)) {
observer.onChanged(it)
}
prev = it
})
}
// 使う方
val liveData = MutableLiveData<Int>()
liveData.observeOnChanged(owner, Observer {
Log.d(TAG, "$it")
});
liveData.postValue(5)
liveData.postValue(5)
liveData.postValue(5)// 最初の1回しか onChanged は呼ばれない
Observable<T>
がイイ!LiveData の購読管理が楽になるところは良いんですけど、 map
や switchMap(flatMap かな)
など最低限の合成メソッドしかない点や、DataBinding との併用が面倒そうな点は微妙です。
ViewModel の向こう側(Usecase層や Repository層)からの I/F は Observable<T>
あるいは、それと相互変換可能なモノにしたいと考えると、ViewModel でも Observable<T>
を使いたいものです。
ということで、ObservableField と LiveData と RxJava をイイ感じで一緒に使う方法を考えてみたので、明日の 「RxJava Advent Calendar 2017 day 5」 に書きます!