DroidKaigi2016 の開催前、公式アプリが有志によって開発中 とのツイート(だったかな?)を見て、ふとこれを「Xamarin.Android に移植してみよう」と思い、夜な夜なぼちぼちと始めました。
後付けですが、移植するにあたり調査したかったのは主に、
です。
Xamarin.Android は、Android API(Javaクラスライブラリを含む)の薄いラッパーで、クラス・メソッド名などは殆どそのままに、言語が Java から C# になったようなものです。
なので、 activity_main.xml
などのリソースファイルもほぼそのまま転用可能です。
尚、 Xamarin.Forms というワンソースで複数プラットフォームで動作するアプリを開発できるフレームワークとは別のものです。
すごく大雑把に、以下のような手順で移植します。
/res
以下を Xamarin.Androidプロジェクト(以下 Xamarin)配下にコピー.jar
ファイルを入手して Xamarin で使えるように Binding Library を作成) DroidKaigi2016 のアプリには DataBinding が使われています。ただ、 BaseObservable
や ObservalbeField
によるガッツリとした OneWay/TwoWay のデータバインディングではなく、POJOなデータクラスを使う OneTime なものしかなかったので、Xamarin への移植に際しては ReactiveProperty や、 MVVMCross などのデータバインディング機能に頼る必要はありませんでした。
一方、Android Data Binding のもう一つの(副次的な)機能である View binding(findViewById
が要らなくなるアレ)の対応は大変でした。
まず、activity_main.xml
などのデータバインド範囲を括る <layout></layout>
ですが、このタグは Xamarin Studio は解釈してくれないのでエラーになります。このタグはもれなくコメントアウトが必要でした。また、カスタムデータバインディングが使われている箇所も同じくです。
なので当然、Android Studio(gradle)が生成する DataBinding
クラスも使用できません。
仕方ない(というか始めからわかっていましたが) ActivityMainBinding
などに相当するクラスを必要を満たす範囲で自作しました。レガシーな FindViewByID()
を使って。
Windowsアプリ開発の世界では、「DSL で記述された画面レイアウトからUI要素変数を自動生成する」ことは、IDE である Visual Sutdio が普通に行ってくれます。Xamarinアプリ開発のIDEである Xamarin Studio も、iOS の .storyboard
ファイルを読んで、自動的に HogeViewController.designer.cs
にUI要素変数を生成してくれます。
Xamarin.Android でも MainActivity.designer.cs
とか生成してくれてもいいのになー、とは頭の片隅で思い続けています。(自作Plug-inとかでなんとかできるのかな?)
DroidKaigi2016アプリでは非常にたくさんのOSSライブラリが使用されており、それを眺めるだけでも非常に勉強になります。このソースを読んで初めて知ったものが何個もありました。 アプリを Xamarin.Android へ移植するにあたり、これらにどのように対応したかを記します。
これらは、nuget パッケージが用意されています。要注意なのは、Xamarin Component にも同じものが存在していて、大抵はそちらの方が古くて動かない、ということです。
Dependency Injection を Annotation ベースで行うライブラリ。 これはないかなーと思いましたがありました。Dagger(短剣) に対して、その名も Stiletto(短剣)w
使い方も殆ど一緒。どうも Dagger1 相当の機能のようですが、アプリ側は少しの修正で対応できました。 もっとも Dagger すら使ったことがなかったので、その理解に少々時間を要しました。 Stiletto は、Xamarin.iOS でも使えるようですが、残念ながら PCL対応していなさそう。PCL対応のプルリクを送るのは今後やってみたいことの一つです。
RESTful API のクライアントをサクッと作れるライブラリ。これも Xamarin 用に移植してくれてる方がいます。
こちらも、 Xamarin.iOS でも利用可能、PCL対応済み、カンペキです。
多機能且つ使いやすい Image Loader の Picasso。これは Xamarin の人が nuget パッケージを用意してくれています。
Picasso が依存している Square.OkHttp
, Square.OkIO
も nuget パッケージが用意されていて、一緒に追加されます。
DroidKaigi当日には、作者 @gfx さんによる即席ランチセッションも聴けたORMライブラリ。若いライブラリなのでさすがに Xamarin版はありません。 Xamarin.Android での ORMライブラリといえば SQLite.NET が有名ですが、使い方が面倒そうだったのと、このアプリのデータ構造と量で、リレーショナルDB使うこともないだろうと、 Key-Value Store である Akavache を使いました。これは以前 Qiita に書いたのでそちらを。
とはいえ、移植の際には、かなり強引な実装をしてしまいました。パフォーマンス悪いのは私の実装が原因です。
これはもう説明不要でしょう。本家 Rx.NET を使用します。
これを使う最大の理由である AndroidSchedulers.mainThread()
は、 Rx.NET では、 observable.ObserveOn(SynchronizationContext.Current)
で代用できるので、不要でした。
これも .NET の日付時刻系クラス(DateTime
, DateTimeOffset
, TimeSpan
) で特に問題ありませんでした。しかし恥ずかしながらこのライブラリも知りませんで、Java では必須になりそうですね。
デバッグを強力に支援してくれるライブラリですね。これも知りませんでした。移植の時にはとりあえず関係なさそう、と思って代替品は探していません(汗
View をいい感じに並べてくれるライブラリ。Xamarin.Android用の nuget パッケージがありました。
Map とか、Analytics とか。こちらも nuget に一通りパッケージが揃っています。Xamarin Components より優先的に使いましょう。
Facebook の いいね!、Twitter の Fav! のようなボタンを提供してくれるライブラリ。押した時のアニメーションがイイ感じです。
これの Xamarin 版は探してもなかったので、 LikeButton の .jar
ファイルを入手して、自前で Java Binding Library プロジェクトを作って使用しています。
これを nuget に放流するのはやりたいことの2つ目。いくつかやったら Xamarin から subscription もらえるだろうか。。。
Parcel のことが大嫌いじゃなくなるライブラリ。移植に際しては、ModelクラスはPOCO(POJOの.NET版と思ってください)にしたかったので直接の代替品は探しませんでした。 ModelクラスのParcel化はなんと JSON.NET でJSONを介しちゃいました。悪手ですがパフォーマンスが気になる程でないならいいでしょ。
クラッシュレポート解析サービスですね。Xamarin なら Xamarin Insights がビルトインで使えるので、通常はそうするでしょう。Crashlytics 自体の Xamarin.Android 用ライブラリは、今のところ存在しないみたいです。
Android Design Support Library の CollapsingToolbarLayout
って、タイトルが複数行あると、展開しても表示されない(!)んですね。なんじゃそら!ってのを解決してくれるライブラリです。
Xamarin.Android向けのは探したけど見つかりませんでした。移植に際してクリティカルじゃなかったので、複数行にならない CollapsingToolbarLayout
のままです。これも nuget パッケージ化したら需要あるかも。
Lollipop で追加された CircularReveal アニメーションを、それ以前のOSでも行えるライブラリです。 これもクリティカルでないので、Xamarin版には移植していません。
DroidKaigi2016 の公式アプリは、ホストの @konifar さんはじめ、 35名 の精鋭有志の皆さんによる爆速開発で、 2/13 に v1.00 がリリース、イベント当日もアップデートされ、私も便利に利用させていただきました。 一方、私の Xamarin.Android への移植は今やっと "とりあえず" 終わったばかり。 しかも、移植の元にしたのが 2/10 付けのソースですが、その日から現在に至るまで本家にマージされた Pull Request の数は 200超! 。 「これが若さか…。」これらの Xamarin版への移植はおじさんにはとても行う気が起きません。DroidKaigi2016公式アプリの Contributors の皆さんを尊敬します。 が、ひとまず動くようになったので、ソースを公開します。モダンな Androidアプリを Xamarin.Android で実現する例としては有用だと思います。
(できればこれを、 プラットフォーム非互換にできる箇所はPCLへ移動、各画面にViewModelを置いてMVVM化、Xamarin.iOS対応、Xamarin.Forms対応とか、いろいろと育てていきたいと思っているのですが、DroidKaigi参加直後で、あれもこれもやりたい病なので、実現は未定です。)